■妖怪おどろおどろ(37話)
脚本/星山博之 演出/石田昌之 作画監督/松本勝次(肝臓に病あり)

鬼太郎「どんなことがあっても、必ず助けるからね。」
ユメコ「うん!」

「気をつけるんじゃ!のこ凶悪な妖気はただの妖怪のものではないぞ!」
タカシの自作自演脅迫状によりおびき出された鬼太郎は、誘拐されたユメコ嬢を救出すべく洋館へと潜入します。
それにしてもこの回は、東映撮影所の近辺が舞台に選ばれただけあって非常に状況設定がリアルです。
ネズミ男が探索を行う光が丘団地、そしてユメコ嬢が誘拐されたOZ大泉学園、その上空を飛ぶ鬼太郎。
放映当時、私はこの舞台の世界の住人だったのです。見上げれば鬼太郎がいる。そんな状況が現実に起こり得るか
得ないか。近所が東映撮影所という練馬区民には、非常に「鬼太郎」が現実として近かった。
鬼太郎とユメコが使うトランシーバー、タカシの着用する白いジャケット。全てが懐かしい。郷愁の80年代です。

ところでおどろおどろの触手がいやらしいよね、と、そんな事を延々と述べてみたいところなのですが
何となく不謹慎な気がして口をつぐんでしまうのは、この「人間」の醜悪さに圧倒されるが故だと思います。
しかしタカシが手首を切っても無傷でケロリとしていることについては、ここで言及してもいい気がします。
なんですかあれ。動脈まで入ってますよ。めちゃめちゃ爽やかに歩いて警察に行きましたが。

あの息子にも既に妖気がとり憑いて「人外」の者になってること、誰か指摘しなくていいんですか。ちょっと。
切な気に見送ってる場合じゃないですよ。鬼太郎。
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鬼畜度/☆    狂い度/★   


■タタリだ〜!?妖怪土ころび(38話)
脚本/大橋志吉 演出/生頼昭憲 作画監督/稲野義信(マニアウケ)

鬼太郎「ねえ父さん。電気を喰う妖怪とは・・本当は、人間のことかも知れないですね。」

「土ころびになって鬼太郎の○○を吸いたいッ!」と多くのショタマニアをワナワナさせた問題作。
そして伝説のマニアウケ・いなのん先生作画監督初作品。初回は気合いがみなぎってか、
非常に安定した兼森風味な3代目を見せてくれます。
原画に及川さん参加も相まっての少しだけ2部風味なカワイイ鬼太郎にメロメロです。

あのような、あのようないかにも何かを吸うのに具合の良さそうな、何かを吸うためと云っても
過言ではないような土ころびのあのお口で、いきなり背後から肛門に吸い付かれた鬼太郎の
大アップでの驚愕ぶりは凄まじいものがあります。「身体が痺れていうこと効かないッ・・・ウンッ!」
と悶絶の台詞を吐き、戸惑う鬼太郎は必見必見これは必見!です。

がんぎ小僧に助けられ、土ころびのお口から逃げ出した鬼太郎が「お陰で助かったア!」といいながら
思わず両手でを押さえているあたり、余程の衝撃的体験だったのでしょう。狙われた尻。
つまり初回から、いなのん先生のマニアっぷりにふさわしく、その筋の(どの筋だ)マニア向け作品と
仕上がっているのであります。

その他見どころ:Aパート途中で「一反もめんが空をいく」挿入歌あり
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鬼畜度/☆    狂い度/★☆  


■三途の川のだつえばばあ(39話)[閻魔大王]
脚本/武上純希 演出/明比正行 作画監督/入好さとる(イケメン御三家/ソース顔)

ユメコちゃん「お手紙。キャバレー妖怪から!(怒りぎみ)」
ネコ娘「鬼太郎!キャバレーなんか行ってるのか!?」
目玉親父「この親不孝者め!ワシも連れてけ!

中期に入って益々作画に安定さを見せる入好・新岡コンビ。
初期の「ふくろさげ」「ばけ猫」と続けて、この回あたりから「入好鬼太郎」の骨格が定まった気がします。
後期の鬼畜さとは裏腹に、中期作画の中では幼くて愛らしい入好鬼太郎が「夜の街」に立つアンバランスは最高です。

***だつえばばあの性欲探究の旅願望からはじまったこの騒動、着地点に姿を見せたのはやはり、閻魔大王でした。

ネコ娘「閻魔大王に伝えて!鬼太郎がだつえばばあにヤられそうなんだ!」
又五郎鬼「なーに鬼太郎が!?そりゃあ大変だ!(略)オラ閻魔様に知らせてくるだよ!!」

鬼太郎がヤられる!と又五郎鬼から伝え聞いた閻魔大王のその後の対応は、ナニを勘違いしたものか非常に迅速で
「青春を想う女の気持ちは哀れである。」なんて云いつつも鬼太郎をヤろうとしただつえばばあを決して許しません。
問答無用とばかりに「最高の罰を下す!」と顔面アップで責めより、最も苦しい人間道にばばあを堕としてしまいました。
よほど鬼太郎をヤろうとしただつえばばあが憎かったのでしょう。私情が。私情がはいり過ぎです。

その後も「ワシの権限で!」などと、閻魔大いばりの鬼太郎愛玩びいきはとどまることを知らず、とうとう鬼太郎に
「のぼりの汽車を待たせてある。乗り遅れるなよ・・・」と優しくささやきだしてしまい、これ、元々は女の情念を巡る
話であったはずが、なにやら別の様相を帯びてきた気がするのは私だけなのでしょうか。そうなのでしょうか。
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鬼畜度/☆    狂い度/★   


■富士山大噴火!?妖怪大首(40話)
脚本/大橋志吉 演出/今沢哲男 作画監督/平田かほる(イケメン御三家/色気担当)

ネズミ男「ユ、ユメコちゃん・・・」
ユメコ「ダメ。自分の心を誤魔化そうとしても・・・。」

初期から一貫してスレンダーかつ清楚な鬼太郎を描き続ける平田作画。
演出・今沢氏の独特な手法も作用してかこの回も3部世界の中では極めて通好みな一面を見せてくれる反面
「大首」というモチーフを生かしきれていたのかどうかは少々疑問であります。
個人的にはこの対ラストボス戦、後期でコンビを組む岡崎氏の演出で拝んでみたかったのでありますがしかし、
どこか湿り気を含みつつ、人知れず富士の樹海でしずしずと行われる「怪事の発端と顛末」として見るならば
それは日本の風土には非常に適した形でもあり。しっとりとした場面構成は好みが分かれるところかも知れません。

***それにしても骨女と腕を組んで歩くネズミ男に、無邪気に微笑みかけるユメコ嬢には天性の魔を感じます。
平田さん作画の人形の様な美しさで、自分の恋奴隷を微笑によって地獄に突き落とすこのしたたかな魔性・これも
日本の美徳の一面でしょうか。
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鬼畜度/☆    狂い度/★   


■激戦!妖怪関ヶ原(41話)
脚本/武上純希 演出/葛西治 作画監督/清山滋崇(影3段の男・体臭の作画)

目玉親父「ほっほー、お前がおめかしとはな。ユメコちゃんとデートか。うふっウフフフヒヒ」
鬼太郎 「そんな!ただの友達としての付き合いですよ。
     妖怪と人間は仲良くしなくちゃいけないって、父さんだって・・!」
目玉親父「うふ。その通り。仲良く、たーのしくな、ウフウフヒヒッヒ」
鬼太郎 「なんか、いやらしい言い方だな!」(ヘアブラシを手にしたままちょと怒ってみる)

この回以降、幻のビデオ未収録作品となります。いきなりのこの狂い振り。
鬼畜・狂い鬼太郎に多大に貢献中の「影3段の男・清山作画」の本気が汗と共に光ります。
真夏の蝉の音とうだるような暑さと香り立つ体臭と・・・
清山さん作画の本領を唐突に突き付けられて激しくむせ返りそうです。

「お前はもう、わらわのしもべ!」といきなりの下僕宣言をされて後、お姫様に操られる鬼太郎の下僕ぶりに赤面し、
邪魅のその無意味なお姫様ごっこにも倒錯的な異常性癖を如実に感じ取って赤面し。
更にBパート冒頭の容赦ないまでのユメコちゃんプロモビデオ「オ・ト・メチックな恋」の挿入と数々の名(迷)場面に
もうなすすべもなくうつむいて赤面するしかないこの怪作。遂に武上氏にどこかのスイッチが入ったものと思われます。

そんな狂い乱立の中、ユメコ嬢が無断外泊をしてまで鬼太郎を助けに夜の森をさまよい、
邪魅と戦うシーンはいじらしくて健気です。
と同時にガマ仙人をも動かしてしまう「乙女」の強さを感じずにはいられません。
ユメコは一番強いのです。蛙も素手で掴むほどに。

その他見どころ:Bパート冒頭の「全裸で飛び込み鬼太郎」「蝶々となって飛ぶ鬼太郎」「お花と一体化鬼太郎」の清山ファンシーマジック!
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鬼畜度/★☆   狂い度/★★  


■妖怪牛鬼(42話)
脚本/星山博之 演出/石田昌之 作画監督/松本朋之(イケメン御三家/しょうゆ顔)

駐在「さぶ!ありゃあお前ホラ話じゃなかったのか!?」
さぶ「いやホラじゃねえ!あン時忠吉が・・・忠吉が!」
(秘かにこの「病みさぶ」がツボだったりします。この直後の、さぶの悪夢が具現化したかの様な牛鬼登場もナイス)

作画レベル・脚本・演出ともによくまとまった秀作ーという感じです。
特にAパートの牛鬼と鬼太郎との戦闘シーンはスピーディでテンポ良く、後の、カメラワークを意識した松本作画の
戦闘シーンのレベルの高さを既に予感させる仕上がりとなっています。(セル全てオリジナルなら尚良かったけれど)

***牛鬼伝説からして、恐らく瀬戸内海の島を舞台に「禁忌」を破ったことから起こる騒動と顛末。
土着の匂い、というのでしょうか。
ムラ社会の狭さと構造を分かり易く見せ、カルラ天を結びとする大団円にスムーズに流れていく感覚は
さながら集団催眠にかかったかのごとく鮮やかで、全ては真夏の白昼夢だったのでは・・とすら思わせます。

「禁忌」を破ったムラ社会の外れ者・その片方の忠吉は牛鬼と化して鬼太郎に命を取られ、相方のさぶは精神を病んで
寝込んでしまうという原始的でネイティブな恐怖感情を呼び起こす状況設定すらもが、あまりにも澄み切ったこの白昼の
青空のもとでは中和されてしまう様な感覚。カミュ的「不条理感」を思わせる真夏の日の出来事です。

一方で視点を牛鬼に転じれば、「殺した者が一番近くにいる」という理論の元、魂を、自らを殺した者へと転化させる
行為自体が非常にナルシスティックかつ嗜虐的であり興味をそそられたりもするのですが。
その挙げ句に、松本さんに
こんなカットを描かせしめた牛鬼にはしてやられたり、とそんな感じ。

その他見どころ:誰もが思う不満でしょうがどうして牛鬼から元に戻った鬼太郎は着衣なんでしょうかね。
全裸で死んだ忠吉が不憫じゃないでしょうかね。スレンダー松本鬼太郎で全裸が見られる最大のチャンスだったのですがね。ぶーぶー。
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鬼畜度/☆    狂い度/☆   


■さら小僧妖怪歌謡大賞(43話)
脚本/武上純希 演出/白土 武 作画監督/清山明(清水並ギャグ!)

鬼太郎「ウチにもテレビ番組表くらいあるさ。」

冴え渡る清水並ギャグ!今回も健在どころが炸裂して凄まじい有り様と化し、遂には建物崩壊となりました。
改めて鑑賞してみると何やら清水並ギャグの突っ走り具合が半端ではなく、ここまで徹底的に突き進まれると
もうある種の感動すら覚えそうになる・・・語尾すらあやふやになりそうです。

***非があるのは河童の歌を盗作した人間の方であり、さら小僧の怒りと行動はしごく当然の所行です。
それなのに鬼太郎の視点すらが「人間サイド」になってしまっているのはつまり、鬼太郎にはさら小僧の感情が
理解出来なかった所以とも云えます。

自分の(種族の)作品を盗作された者の怒り・悲しみ・悔しさは、これは、された者でなければ分からない
表現者としての感情。そして盗作した側は大概の場合、自身の方を被害者に立てる。これも世の常でしょうか。

「プライドがどうのって、結局自分より上手く歌われるのが嫌だっただけじゃないか!」

この鬼太郎の指差しの断言は、そして客観的な批判であり。
当事者同士の複雑な感情云々を切って捨てる「傍観者」としての発言。後頭部をガツンとやられる様な。
つまり「鬼太郎」とは「大衆」なのです。そして「流動的な世の中」でもあります。
さら小僧もタケシも、それに気が付いた瞬間から「流れる」ことが出来たのかも知れません。河童の川流れ。

それにしても鬼太郎の「仲間の尻子玉がかかってるんですよ!」という拳握りしめ説得シーンは脱力です。
仲間の「命」ではなく、尻子玉・・・。尻・・・・・。
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鬼畜度/★    狂い度/★   


■あの世からの使者・死神(44話)
脚本/大橋志吉 演出/生頼昭憲 作画監督/松本勝次(肝臓に病あり)

ネズミ男「この人はな、母性愛をおすそわけする会の会長様なんだ。」
鬼太郎 「男なのに母性愛?」
(買い物かごを手に持ってきょとんとした勝次の愛らしさときたら・・・・)

『まくら返し』に続いて「鬼太郎の母(ただし偽物)」の登場です。
清楚な山本作画の時には抱かれることすら叶わなかった母でしたが、今回は母の気合い十分、魅せてくれます。
普段から顔色が悪く寡黙な、そして不機嫌そうな勝次鬼太郎がここまで甘えてくれるとは母もビックリ。

***まず特筆すべきは、母のいない鬼太郎と身寄りのないネズミ男を「母の誕生日」のプレゼント選びに
付き合わせるユメコちゃんの、恐るべき無意識的少女地獄テクニック。
強くて優しくて素敵なあなたの、崩れる様を見てみたい。優しいふりして傷付けて、傷付いたその顔を見てみたい。
そんな愛らしい少女の感情に冒頭から翻弄されて、鬼太郎がふと垣間見せた心の隙間。
これは、そんな心の隙間を泥のついた手で広げ、塩を揉みこんで喰らう、非常に屈折した素敵な話でありましょうか。

「うわあ・・・母さんと寝られるなんて、夢を見てるみたいだ。・・・母さんの匂いだ・・・」

「母」に会えた鬼太郎が、ヒーロー然をあっさり捨ててさながら幼児と化し、甘えまくる倒錯的な状況下。
その状況下における鬼太郎の無防備さには、何か哀しい感情が去来します。
それは、「認知下における母の幻想」。

鬼太郎にとっては「母」の実体・真実にさしたる興味も関心も無いのかも知れません。
つまりは「自分が鬼太郎の母」と云ってくれれば誰であれ、鬼太郎は無条件にそれを受け入れて信じるのでしょう。
存分に自分を受け止めて甘えさせてくれる相手、それが「鬼太郎の母」なのです。

切望するあまり盲いて幸せを成す。
そのためなら鬼太郎は、毒入りスープだって飲み干してみせます。何度でも。美味しそうに。

その他見どころ:「ン・・ボクもう入らないよう」という鬼太郎の台詞と表情と声が・・・・・ハアハアハアハアハア・・・ウウウ・・
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鬼畜度/☆    狂い度/☆   


■妖怪花を救え!(45話)[ぬらりひょん]
脚本/星山博之 演出/明比正行 作画監督/稲野義信(マニアウケ)

鬼太郎「妖怪花、心配しないで。どんなことがあっても、君たちはボクが守ってあげるから!」
(云われたい云われたい云われ隊!)

『土ころび』の兼森作画寄りから一転、かなりいなのん風味が出てきた作画。独特テイスト。
「中期いなのん作画」とも云うべきこの、丸くてぷよぷよした稲野鬼太郎のアヤシサが光ります。

***悪趣味かつ毒々しく愛らしさのかけらもない「妖怪花」たちを可愛がるホテル社長の趣味にも
どこかマニアチックな匂いを嗅ぎとりつつ。
何とも形容しがたい感情を見る度に認識することになるこの回、それは「あやかしさ」なのかも知れません。

「先生」「用心棒」という名称以外に存在感の希薄な『妖怪』が、その「名称不在」が示す様に鬼太郎によって
存在を消されてしまうBパート山場の「あやかしさ」は、何度見ても奇妙にしこりが残るものであります。
その一因は、視点が他者から捉えた「あやかしの子供・鬼太郎」に起因する「不条理な怪異の不気味さ」でしょうか。

同様な視点は、Aパートで土地ならし中のダンプカーに下駄で攻撃して飛び移った「子供」に対して、運転手が感じた
不条理な恐怖にも見ることが出来ます。つまり、鬼太郎という子供の「無気味さと怪異」、それがじわじわと来るのです。
意識して描かれていないだけに余計に。

(注/原作の妖怪の名称は「あしまがり」)

その他見どころ:いなのん鬼太郎の動きがいちいち可愛くて困ります。真空に取り込まれてもがく動作の愛らしさどうしてくれようか。
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鬼畜度/☆    狂い度/☆   


■妖怪大統領こうもり猫(46話)[閻魔大王]
脚本/大橋志吉 演出/葛西治 作画監督/入好さとる(イケメン御三家/ソース顔)

閻魔大王「方法はそれしかなーい!!!」
(鬼太郎を元に戻すためならなんだってやります!時空間だって飛び越えます!)

中期の可愛い入好作画の鬼太郎ファミリーが素晴らしい老人プレーを見せてくれましたが、入好鬼太郎はジジイに
なってもますます愛らしいのでした。筋ばった老人描写に感嘆です。ちなみに、この回の制作進行は「マニー」こと
遠藤卓司さんなので、カルトな寿限無(新岡浩美)ファンはチェックしてほくそえむのもひとつの楽しみ方です。

**アメリカからやってきたこうもり猫と地獄の葬頭河婆が手を組んで、「玉手箱」を使って全世界支配を目論む
という、壮大なんだか荒唐無稽なんだかよく分からないストーリーではありますが。
その過程で鬼太郎が石にされてしまい、三途の川に沈められた後の、鬼太郎ファミリーの狼狽ぶりはもう大変でした。

目玉親父「仕方ない・・閻魔大王さまに相談するしかあるまい。」
砂かけ婆「え、閻魔大王に・・!」
子泣き爺「そりゃいけねえよ。こんな失敗を話したらそれこそワシらがどんなお仕置きを受けるかわからん」
ネズミ男「そうだぜ。オレたちはもう妖怪でいられなくなるぜ。」
ネコ娘 「ねえみんな、必死に頼めば、閻魔大王さま、きっと分かってくれるはずよ!」

鬼太郎が石にされたなんてことが閻魔にバレたら一大事だ!と必死になるあまり、自分らの保身しか既に考えていない
ところが素晴らしいです。問題は鬼太郎よりも「玉手箱」なのですが。鬼太郎よりも「全世界支配を止める」事なのですが。

「なに!?玉手箱を奪われたうえ、鬼太郎まで!?
と、やはり閻魔大王まで、もう事件の中心は「鬼太郎」です。画面に収まりきらないアップで鬼太郎の名を叫びます。
そしてとうとう、鬼太郎の姿を元に戻すためだけにサイの河原を支配する「時」を戻してしまいます。マジっすか!

「鬼太郎が元に戻れば・・・アイツなら自力で脱出するじゃろう」
などと猫かわいがり炸裂で、またしても地獄を、鬼太郎ひとりのためだけにハチャメチャにしてしまった閻魔の偏愛には
もう、ほとほと脱帽としかいいようがありません。愛は時空をも超えるのです。
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鬼畜度/☆    狂い度/★★  


■妖怪のびあがりと吸血木(47話)
脚本/武上純希 演出/今沢哲男 作画監督/平田かほる(イケメン御三家/色気担当)

ネコ娘「いいわね。愛しあうって・・・」
(そんな愛しあう杉作と松代の姿を見ても顔色ひとつ変えない奥ゆかしい平田鬼太郎なのであり)

清楚な色気を誇る平田作画の中でも、とりわけ突出したそれを見せるのがこの回です。
悶絶の果ての気絶、苦しみあえぐ表情、異形の姿に成り果てる断末魔の叫び----平田鬼太郎が魅せる倒錯的な
痴態の数々は普段の落ち着いた表情との格差が生み出すアンバランス・ギャップも含めて、これは、かなり、すごい!!

***「細胞単位のレイプ」 主点は、ここにあります。
(松代を杉作の目の前で、そして鬼太郎を長い時間をかけて存分に。)
のびあがりはその大きな目で、鬼太郎が犯され、崩れ落ちる様を下卑た笑いと共に見つめるのです。
----徐々に 徐々に 一度では終わらせない じっくりと 陥落させる---- 

そして、苦痛とも快楽ともつかない平田鬼太郎の喘ぎ声と喘ぐ姿を、のびあがりと共に鑑賞する。
これが「のびあがりの目線」、我々の視点は、ここであります。思う存分、猟奇の光景を楽しみましょう。

その他見どころ:杉作!きしょ!ヤサ男でも粘着質できしょ!木に頬擦りする姿きしょ!ピンクの背広もイヤーン.......。
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鬼畜度/☆    狂い度/★   


■妖怪いやみ(48話)
脚本/星山博之 演出/石田昌久 作画監督/松本朋之(イケメン御三家/しょうゆ顔)

ネズミ男「恋の情熱なら誰にも負けねえ!くらえ〜!300年の伝統のこの味!」
(そして鬼太郎向けて強烈な屁を。この病んでるカット大好きです。ていうか尻が・・)

イケメン松本鬼太郎が本能全開で醜態をさらす空前の問題作。
ここまで気持ちよく色に狂ってくれると「うわー・・」と何か爽やかな感動すら覚えるのですが、
「性欲」万歳ながらのこのコミカルさとテンポの良さは、軽快なノリのよさを持つ松本さんが手掛けてこその
「娯楽」成功作と云えます。つまり、「性欲」テーマながら、家族揃って、気まずい思いをすることもなく
大笑いして見られるという貴重な回なのです。

本能丸出しでユメコ嬢にしがみつく松本鬼太郎が示すこの回の狂いぶりは、以下の台詞からも体感出来ます。
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いやみ先生「アンタが鬼太郎ちゃんね!カワイイッ」
鬼太郎   「うっ・・(赤面)そ、そうだ。き、鬼太郎だ!」
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鬼太郎(色ボケ)「ユメコちゃんはボクのお嫁さんになる人だ!
オマエみたいな不潔なヤツに渡してたまるかってんだ!!」
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目玉親父     「鬼太郎!お前にはもっとやるべき大事なことがあるじゃろう!」
鬼太郎(色ボケ)「そんなことはもうどうだっていいんです!!!」
目玉親父     「ど、どうだっていい・・・?」
鬼太郎(色ボケ)
ボクは今、恋の勝利者になれるかどうかに命を賭けているんです!
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鬼太郎(色ボケ)「ユメコちゃんは絶対にはなさないぞ!!!」
ネズミ男     「ヘッ!そりゃあこっちの台詞だ!!」
鬼太郎(色ボケ)
オマエみたいな臭い男の出る幕じゃねえ!!
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いやみ先生「オッホッホッホッホ。鬼太郎ちゃん来てくれたのね。嬉しい!」
鬼太郎   「いやみ!楽しい気分のエキスは返してもらうぞ!」
いやみ先生「そう興奮しないで。楽しいコトしましょうヨ。ネ、イイでしょ。鬼太郎ちゃ・ん・・☆」
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以上です。もうこれは、見てください。是非。

その他見どころ:結局、松本鬼太郎はこの回で2回もいやみ先生の金玉を蹴り上げたり踏み付けたりにじったりした訳ですね。
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鬼畜度/★☆  狂い度/★★☆  


■妖怪殺人事件おんもらき(49話)
脚本/武上純希 演出/明比正行 作画監督/山口泰弘(ムチムチヤマグッチ先生)

鬼太郎「よその半分のお金で人探し、浮気調べ、何でも引き受ける鬼太郎探偵社・・・」
(純情なヤマグッチ鬼太郎がいかがわしいピンクのチラシを持ってそんな台詞を!)

家を追われた鬼太郎が、ユメコ嬢と手に手をとって伊豆の別荘へと逃避行----
ヤマグッチ先生作画の回というのは、その元気ハツラツぶりについ流してしまいそうになるのですが、
じつはかなり問題作が多かったりします。ナイフとフォークで食事をする、ユメコ嬢と夜のバルコニーで
ラブシーンを演じる、牢屋の鉄格子に取り縋る----こんな違和感たっぷりの行動を違和感なくこなして
しまうのは、どっしりと構えたヤマグッチ鬼太郎のなせる技でしょうか。

***ところでこの別荘の主、ユメコ嬢が語る「親戚のおじさま」伊集院とは。
正夫側の天童家の血縁の匂いが従来の親戚筋とは明らかに異なる点と、その年齢の若さを考えると、
どうも優子側の血縁者---しかも、ユメコ嬢との親しさから見るに、優子の弟という可能性が
浮上してならないのであります。
あの若さで別荘を持てる程の資産のある「伊集院家」---ユメコの母・優子の実家の雰囲気を感じ取れる、
貴重な回だと思っているのは私だけなのかも知れませんが。

「人間にとっても妖怪にとっても一番大事なを踏みにじった。おんもらき!お前だけは許さない!」
こんなカッコイイ台詞を吐いた鬼太郎が、前夜、ユメコ嬢の決死のアプローチを拒絶してしまったのは、
やはりヤマグッチ鬼太郎のなせる技とは思っても・・・・やはり・・・
勿体ない・・・折角のチャンスを・・・・。

その他見どころ:ネズミ男先生の脱糞時の破裂音をこれでもかと聞かせるのは何のプレイなんでしょうか。
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鬼畜度/☆  狂い度/★★  


■妖怪海座頭の怒り(50話)
脚本/大橋志吉 演出/生頼昭憲 作画監督/清山滋崇(影3段の男・体臭の作画)

海座頭「過去があり 現在があり 未来がある。そのことを今の人間は忘れておる。」

島、海、漁師、息子アキオ、そしていかだで海を渡る鬼太郎、と、映画「妖怪大戦争」を
何故か彷佛とさせる非常に私好みのこの回は、船出した漁師たちの漁場争いから端を発するという、
これまた私好みなプロレタリアート臭の強い作品です。

「人間どもは昔のことをちっとも振り返らないからだ。これでは同じ過ちを繰り返すばかり。」
と鬼太郎や漁師たちを諭す海座頭ですがしかし、喰うために殺す。喰うために争う。それが生物の本質であり、
生きるために日々生死と向き合っている漁師プロレタリアートに、源平合戦を持ち出して諭すのはどうなんでしょうか。
むしろ、このふやけた現代に、原始的本能を絶やさずに獰猛な「生き方」を見せてくれる漁師たちには敬意を表します。

狭いムラ社会・島のしきたり・漁場争いを巡っての血なまぐさい事件・・・と、そんな構図にこそむしろ胸を踊らせる
私の様な根性の腐った人間は、鬼太郎のごとくバチコン!と、海座頭の琵琶でぶん殴られるべきだと思います。本当に。
海座頭先生の尊い、そして深い教えがまるで届いていないのですから。
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鬼畜度/☆  狂い度/★  


■世界妖怪ラリー(51話)[ぬらりひょん]
脚本/星山博之 演出/白土 武 作画監督/清山明(清水並ギャグ!)

鬼太郎「心配するな。勝ったからといって、ボクはお前たちを支配する気はない。」
狼男 「・・また借りが出来たな。」(微笑む)
(これで狼男先生も鬼太郎大好きっ子になってしまいました!断言!)

さびれた漁村のはきもの屋の看板上空に浮かぶアメリカ妖怪のボス・バックベアード。
あ。ありえない。ありえない光景です。7ケ国の最強妖怪を集めて、わざわざ車でレースをし、
そして勝った国は負けた国全部を支配出来るらしいのです。
という訳でバックベアード・魔女・フランケン・狼男(映画「妖怪大戦争」メンバー)・
水虎・グレムリン、そして日本代表の鬼太郎ちゃんとで、いきなり日本の片田舎のさびれた漁村を
舞台にして目的だけは壮大なレースが始まってしまうのでした。

審判の赤舌の「正々堂々と勝負する様に!」というお言葉が虚しくなるほどの醜い争い、そうです。
このメンバーでフェアプレーなんて無理に決まっています。鬼太郎の車に体当たりをして妨害するフランケンの
「何をやっても勝てばいいんだ!勝てば!」という言葉に集約される通り、これは正々堂々を隠れ蓑にした、
醜い足の引っ張り合いを傍観して楽しむレースなのであります。

妖怪たちは泥沼の裏切り劇の連続で醜く自滅を繰り返してリタイヤとなり、最後は鬼太郎とバックベアードとの
一騎討ちになりますが。その素晴らしきフェアプレー精神で、醜い争いの中でもやはり鬼太郎だけは正々堂々と
戦うのだ!と思いきや、いきなり最後は前方を走るベアードの車にリモコン下駄(しかも鋼鉄バージョン)を
食らわせてクラッシュ
させます。鬼畜な反則技です。どうしたんですか。正義の味方。
そして終いには、お互いの反則技で廃車と化した車を汗まみれになって必死に押しつつゴールを目指すというこの
不様さは、とてもじゃありませんが世界の妖怪王者決定戦とは思えません。醜い。醜すぎます。
醜すぎて惚れ惚れです。これが本質です。

フェアプレーなんて糞くらえ。
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鬼畜度/☆  狂い度/★★☆  


■燃えるネズミ男ゲタ合戦(52話)
脚本/武上純希 演出/葛西治 作画監督/入好さとる(イケメン御三家/ソース顔)

鬼太郎「花子さんは純情だなア。それは、ネズミ男に騙されたんですよ。」
(『おんもらき』に次いで鬼太郎に「純情」と云わしめる武上さん・・・)

***「でも、ネズミ男さんはいい人だわ。」
「穢れを知らない」妖精花子の、純情と云うよりは無神経故の愚かさが生むピュアな感情に、
全員が熱病に犯されたかの様にのっかってしまった-----。
「仲間」「友情」「信じる心」-----「正論」を恥ずかし気もなく掲げる行為の裏に潜む病理の深さを、
潜在的に読み取って嫌悪する妖怪「逆柱」。
彼は、その名が示す通り、「正論」に対する「反逆」という方法でしか自己存在の顕示が出来ません。
(そしてそれはやはり、「正論」の名の元に成敗される定めを持っております。それが大衆の「理」でもある故に。)

「ふ・・麗しき友情か・・・」
鬼太郎とネズミ男を見つめて無感情に呟く逆柱はしかし、金が欲しかった訳でも友情を壊したかった訳でもなく。
ただ、自分と同じ匂いのするネズミ男に側にいて欲しかっただけだったのかも知れません。
それが「共犯者」であれ「人質」であれ、あるいは利用されるだけの関係であれ。

全てを諦めてしまった故の、暗い目で絶望の淵を覗いてしまった者たちだけの、ほんとうに 欲する もの。

 だからこそ逆柱は、鬼太郎たちの無邪気な振舞いに楔を打ち込まずにはいられませんでした。
自分が「正論」という名の元に倒されるであろうことは、その暗い目で遥か昔に見通していたけれども。

その他見どころ:妖力ゲタが足から外れてひっくり返る入好鬼太郎がカハー!可愛いったら!もう!
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鬼畜度/☆  狂い度/★☆  


■皿屋敷の妖怪モウリョウ(53話)
脚本/大橋志吉 演出/芝田浩樹 作画監督/松本勝次(肝臓に病あり)

鬼太郎「この話、断らせてもらうよ。ボクたちだって妖怪なんだ!ああまで云われてまで!」
(ユメコパパと同じ顔 同じ声の皿田太一への過剰反応を示す鬼太郎・・・)

俺はこういう美しいものが描きたいんだ!と云わんばかりの美少年正太と美女町子に情熱を注ぐ勝次先生です。
勝次氏が描いた正夫はこんな感じなのかという、正夫とウリ二つキャラ・皿田太一は、声までもが正夫と同じで
もう取りかえしがつきません。正夫より鬼畜度が5割増しな太一と、勝次鬼太郎との深夜の庭園でのやりとりには
良からぬ匂いがぷんぷんします。しますとも。

***冒頭、正太の寝姿をしつこく撮りおろすこの視点----これは死んだ秘書・町子の視点です。

秘書・町子が御多分に漏れず、皿田太一との不倫関係にあったであろうことは。
彼女の幽霊がまず最初に皿田の妻の前に現れ、妻を錯乱状態に陥れたことからも、そしてその妻が、
息子の正太を溺愛し、深夜の不審な物音に際しても太一を全く頼らなかったことからも推測出来ます。

勝次の本気が光る美少年・正太の町子に対する執着を思うに、この少年もまた、泥沼の愛憎劇を演じた1人である事は
間違いありません。(それは例えば、哀しい女の拠り所としてだったのか、それともそれ以上のものがあったのか。)

事態の打開を込めて、女は皿を割った。
男は、女の願いを拒絶した。

これではもう、この哀しい女は死ぬしかない。壮絶に。呪いを込めて。

 この愛憎うずまく無気味な館に、鬼太郎は足を踏み入れた。
感情の尖った 終始不機嫌な鬼太郎---
それはこの館の、禍々しいまでの愛欲の果てを敏感に感じ取っての嫌悪の表れなのです。

その他見どころ:太一の木刀をすっと腕で払い除け「どうぞ、ご勝手に。」と答える勝次鬼太郎が素敵です
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鬼畜度/☆  狂い度/★   


■悪魔ベリアル(54話)
脚本/武上純希 演出/石田昌之 作画監督/稲野義信(マニアウケ)

ネズミ男「これが有名なやさかりの赤玉だよ!どこにでもそこにでもぶらさがってる玉じゃないよ!」

烏天狗一族の長老に魔力を封じられ、じっと我慢の132年。
悪魔ベリアルの132年分の怨みつらみは増幅し、憎い長老を封じるだけに留まらず、日本滅亡へと向かいます。

「ジャパンの妖怪ども来るなら来い!俺様は逃げも隠れもしない!」
暗い復讐に燃える悪魔は、日本を守ろうとあがく正義の鬼太郎たちよりもよほど潔く、正々堂々としています。
憎しみに凝り固まり、結果、一点の曇りもない純粋な憎悪が生じた時、人は「悪魔」と化すのです。
大義名分に踊らされる「正義」よりもずっと、純粋な感情がそこにはあります。最早、何者をも恐れない。

「ベリアルの弱点は心臓よー!」
そんな純粋的「悪魔」の弱点が、自分自身の「心」だったという帰結は、故にあまりにも哀しいのです。
弱点を鬼太郎に伝えるネコ娘に「黙れ!」「黙れ!」と叫ぶベリアルの姿に、おのずから同情してしまうほどに。

その他見どころ:ベリアルが祭り会場で行うトランプマジックの客の中に「妖怪大戦争」の虎造がいます。さすがマニアの神・いなのんです。
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鬼畜度/☆  狂い度/★   


■マル秘指令!ネズミ男は死刑だ!(55話)[閻魔大王]
脚本/星山博之 演出/今沢哲男 作画監督/平田かほる(イケメン御三家/色気担当)

閻魔大王「鬼太郎!命令を破った罰を言い渡す!」
鬼太郎「どうしてもボクには、自分の手で殺すことが出来ませんでした。
    どんな罰を受けようとも
覚悟は出来ています。」

閻魔大王の鬼太郎に対する屈折した感情を露骨に剥き出しに見せてくれた、倒錯度合いの非常に高い作品です。
というか、閻魔がとうとうヤっちまいました。大変ですよ。ご乱心もいいところです。
倒錯には欠かせない、苦悩の色気を描かせたら天下一品の平田鬼太郎でこの回が見られるとは、まさに感無量です。

***「ネズミ男をお前の手で死刑にしろ!」
夜更けのゲゲゲハウスの妖怪テレビから(しつこい様ですが鬼太郎と閻魔大王とお揃いです。このテレビ。)
突然鬼太郎に語りかけ、その姿を現わした閻魔大王の言葉に、鬼太郎は切なく乱れ、動揺します。
今まで自分にだけは異常なほどの親切を見せてくれていた閻魔大王のこの仕打ち。これは鬼太郎でなくとも
動揺しますよ。いきなりですよ。今まで散々「鬼太郎」「鬼太郎」云ってた人が。なんですかこの所行は。

暗い。暗い。倒錯の臭いがします。ぷんぷんします。そうでなくてはありえない展開です。

鬼太郎に実行不可能な命令を自ら与えることで、閻魔大王は鬼太郎に「罰」を与えることが出来る立場に
必然的にたてるのです。さらにその間、命令と実行のはざまで苦悩する鬼太郎の姿までアヤシイ妖怪テレビから
延々と覗き見放題という特典付きです。可愛い子ほど苛めてやりたい。泣かせてみたい。支配してやりたい。
そんな屈折した想いと隠しきれない熱情とが交錯した結果-----------------。

あの様な常軌を逸した命令が無表情に、しかし冷酷に口をついて生まれました。

そんなどす黒い感情の中、対する鬼太郎の潔い、犯しがたい凛とした態度。
鬼太郎は最後まで、心のどこかで信じていたのかも知れません。

閻魔大王は自分に罰など与えることは出来ないと。

その他見所:「あなたとはライバルだけど、お願い!」とネコ娘とユメコちゃんが2人、鬼太郎のために立ち上がる姿は可愛いです
*『ビビビのネズミ男』/『100パーセント妖怪CAT』の挿入歌あり。
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鬼畜度/☆  狂い度/★★   


■タヌキ軍団日本征服!<前編>(56話)
脚本/星山博之 演出/芹川有吾 作画監督/松本朋之(イケメン御三家/しょうゆ顔)

鬼太郎「ネズミ男!はなせ!逃げるんだ!」
ネズミ男「イヤだ!ひとりにしないでくれ!」
(道路の真ん中で熱い抱擁を交わす2人。どうかしています。)

松本鬼太郎がカッコ良いのです。とても頭身が高くてスレンダーなのです。影指定にも気合いが滲みます。
そしてこの前編、その筋のマニアにはたまらない緊縛鬼太郎を何と3パターンも見せてくれる素晴らしさです。

まずは両手両足を横にした木の棒に吊るし上げるご馳走縛り・次いで後ろ手の胴巻き縛り・そして最後に
後ろ手縛り全身バージョン+オプション@放置プレー付きでした。なんということでしょうか。
尋常とは思えません。何がというと、タヌキたちの縛りの技術がです。目を本気にして語りますが。
タヌキたちの縛る相手は鬼太郎だけに留まらず、ネズミ男に首相に鬼太郎ファミリー一行と、とにかく
縛りまくります。とことん縛ります。そんなに大量の荒縄をあんな地底のどこに隠し持っていたのかという
事と、あの鬼太郎を縛る手慣れた手付きを見ては、これは、地底に封印された奴等にはお似合いな、まことに
アンダーグラウンドな趣向を持っていた。そして常用していたということは明白なのです。言い切りますが。

その「縄師」としての技術がいかに優れた卓越したものかは、一番最初の鬼太郎ご馳走縛りでも明らかです。
あの様な高度かつ危険な縛り+吊るしを実行してなお、鬼太郎の手首が脱臼もせず鬱血も見せず美しいままなのは
その技術が証明するところであります。ついでに云えば、後編で縛られたまま川底へ突き落とされた鬼太郎が
水中で縄抜けに成功出来たのも、縄師特有の「縛り加減の妙」による功績が大きいと思われます。素人には無理です。

などと、「縄」だけで延々と変態の熱い話が続きそうなのでこの辺りで止めておきますが。
最後に私が長年疑問に感じている点を述べてみます。
話のラスト、後ろ手縛りで放置プレー中の鬼太郎の苦し気なアップでこの回は終わるのですが。
あの鬼太郎の苦しくも切な気な表情と、たらたら流れる脂汗、そして苦悶のうめき声はどうしたことでしょうか。
何かを必死に我慢している様子です。何かを。何を我慢しているのでしょうか。何をしたいのでしょうか。

ここで、緊縛にはつきものの、ある種の変態プレーを、鬼太郎がタヌキたちに施された上での放置プレーという
可能性が浮上するのですが、ここは云わぬが花としておきます。変態には秘匿の美がお似合いなのです。
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鬼畜度/★☆  狂い度/★☆  


■タヌキ軍団日本征服!<後編>(57話)[天童家]
脚本/星山博之 演出/芹川有吾 作画監督/山口泰弘(ムチムチヤマグッチ先生)

星郎「おまわりさん、尻尾つけられてるウーー!」
(それよりも、天童家の座敷に鬼太郎の特大ポスターが飾ってある方が気になるのだが・・)

地底では鬼太郎が倒錯的変態プレーで責められている最中、地上では魅惑の天童家ファミリーが
タヌキどもの奴隷としてその姿を見せます。緊縛変態プレーの後は奴隷とは。さすがタヌキ軍団。
何だか分かりませんがさすが日本を征服するだけのことはあります。「征服。」なんと蠱惑的な言葉でしょうか。

奴隷に堕ちた天童家、主人の正夫は強制労働に従事させられ、その逞しき肉体はタヌキたちによって消費されます。
更にタヌキから、畜生であるタヌキから罵倒の末に鞭打ちの刑に処せられ、泥だらけになって地面に這いつくばる姿など
もはや正夫は立派なひとりの奴隷です。素晴らしき奴隷。奴隷の中の奴隷。そんな調教知識を当時、子供であった私に
正夫を通じて教え込んだから、この様な変態が出来上がってしまったではないですか。と。思わず話がそれましたが。

息子の星郎は正夫と同じく肉体労働、そして娘のユメコ嬢は食事の準備と配給にいそしんでおります。
そこに母、優子の姿はありません。すると母の優子は、どこへ連れていかれたのでしょうか。奴隷としての優子の役割。
それは何故だか触れてはいけない事の様な気がします。目を逸らしましょう。世の中には知らなくていい事もあるのです。

そんな大人の処世術すら巧みに盛り込んだこの前後編、未見の方は是非東映ヒーロークラブビデオでご覧下さい。
最後は業者のまわし者の様な締めになってしまいましたが、これも素晴らしき汚い大人のなせる技なのでしょうか。
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鬼畜度/☆   狂い度/★☆  


■妖怪城の目目連(58話[ぬらりひょん]
脚本/大橋志吉 演出/生頼昭憲 作画監督/清山滋崇(影3段の男・体臭の作画)

朱の盆「いえ・・あのお方はやっぱり天使だったんです。」
ぬらりひょん「ブァカかっ!お前は!!

今だ「後期鬼畜鬼太郎」に突入していないこの中期、中々に冴え渡る狂いぶりを見せる清山作画です。
何故でしょう。何故この人の作画はこんなに狂っているのでしょう。それは。オーバーアクションの素敵さです。

「約束通りやってきたぞ!早くユメコちゃんを返すんだ!」
このアクション。この右手指差しと、左手の溜め。初めて見た時はひっくり返ったものです。普通じゃありません。
落ち込んでいる時でも、
このアクションさえ見れば私は元気になれます。ある意味、3代目の真骨頂。

***突如現れた狂いの象徴「妖怪城」に、星郎を残して単身乗り込む鬼太郎の潔さに比べ、形成不利と見るや
屋根の上に逃げるぬらりひょん先生の情けなさと云ったら、不様で素敵です。

汗をかいて後ずさる鬼太郎にとどめを刺そうと襲いかかるぬらりひょんが、ちゃんちゃんこを顔に受けただけで
城から落下してしまったのは、ちゃんちゃんこに残る鬼太郎のぬくもりがあまりにも温かかったから・・・・。

この回、ぬらりひょんの手下の朱の盆がユメコちゃんに惚れるきっかけともなる回であり、これが後々最終回まで
影響を与えることを考えると、狂いながらもしっかりとツボを押さえた話なのであり、要必見。

その他見所:妖怪城から幽霊となって出てきた鬼太郎を見つけた星郎のアクションは見逃せない。胸に両手、笑顔で「鬼太郎さァん!」

鬼畜度/★☆  狂い度/★★  


■宵待ち草の後神(59話)
脚本/大橋志吉 演出/白土 武 作画監督/清山明(清水並ギャグ!)

鬼太郎「夕暮れに、ボクと父さんで忍び込むから、ユメコちゃんは帰った方が・・」
ユメコ「いいえ帰らないわ!!カオリちゃんは私の友達よ!とっても仲のいい友達なんだもの!!!」
鬼太郎「そ、そうだね」(←ものすごく怯え気味)

ユメコ嬢は最強です。鬼太郎の指図などは受けません。男のつまらない優しさは仇で返す。これが女です。
「ヒーロー」である鬼太郎が当然のごとく、敵地に入る際に「ヒロイン」ユメコちゃんに帰宅を促すのですが
彼女は猛烈に反発するのです。そんな男根的な思いやりは必要無い、少女の本能がそう告げている様にも感じます。

対する鬼太郎。「ヒーロー」鬼太郎は、恐らくそのような「ヒロイン」は好みではないのでしょう。
フェミニストを気取る3代目ですが、その精神が遺憾なく発揮されるのは決まって
「ヒーローの言動に従順に従う、守るべき存在」に対してなのですから。それは例えば、男を待ち続ける後神の様な。

分かりやすい正義のヒーロー、男根思想に彩られたヒーロー。故に彼は、無敵なのかも知れません。

その他見所:女の笑い声が響き渡る中、鬼太郎が妖怪サボテンと格闘し、呑込まれる一連の戦闘シーンは官能的&倒錯的すぎて鼻血ブー
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鬼畜度/★   狂い度/★☆  


■巨人妖怪ダイダラボッチ(60話)[ぬらりひょん][天童家]
脚本/星山博之 演出/石田昌久 作画監督/松本勝次(肝臓に病あり)

ぬらりひょん「好戦的でどうしようもなく愚かな生き物、それがお前達人間だ。」

満月の夜に行われる黒の秘密結社の闇の儀式。そんな冒頭がふさわしい魅惑のカルトストーリーです。

「ダイダラボッチ様を信じなさい。信じた者だけが救われるのです。」
「キミが不浄な者を本当に処理したら、その日から聖ネズミ男として崇められよう。」
「はい感激です!先輩!」
「神の御力で邪悪な異教徒の驚異は去った!」
この数々のカルトな台詞。カルト集団の恐ろしさというものを先駆けて世の中に発信していた1980年代。
当時はまだ、こんな設定は遠い国の出来事かあるいは夢物語として語られたのかも知れません。
時代は変わりました。人間が空想するものは「暗」の部分であればあるほど実現しやすい。
この話は紛れもなく、伝説ではなく現実です。

「ダイダラボッチは物を産む土地の神ばい。
ばってん、一歩あやまれば、破壊の大魔神になるとも云われとるとよ。」

彼はただ、喰い、そして自分の身を守るという本能の行動を起こしただけでした。
しかし周りはそれを許してはくれませんでした。
彼の存在、彼の純真はそれを利用しようとする周りの思惑に翻弄され、
彼が彼であることをすら認めてはくれないのです。
ダイダラボッチは、「祟り神」となりました。なるしかありませんでした。

そしてそれは哀しい「脳なしの神」です。
狂信的な偶像崇拝に対する痛烈な皮肉と哀しみ。
せめてもの救いは、脳を取り戻したダイダラボッチの、無垢な笑顔だけなのでした。

その他みどころ:天童家が群集に混じって東京脱出を試みています。今度は難民デビューとは、正夫もつくづく災難続きです。
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鬼畜度/☆   狂い度/☆   


■まぼろしの汽車(61話)[閻魔大王]
脚本/大橋志吉 演出/葛西治 作画監督/松本朋之(イケメン御三家/しょうゆ顔)

閻魔大王「ちょっと危険じゃが・・方法はそれしかあるまい。」
(またそんなこと云ってます。鬼太郎を助けるためなら時間を戻すくらい容易いもんです!)

松本さん鬼畜鬼太郎2連発/前編です。狂ってきました。狂ってきましたよ!
経口・粘液感染というエロティックな方法を用いる「吸血鬼」の話だけに、見所はなんといっても鬼太郎吸血鬼です。
種族を増やす本能的行動がしばしば快楽を伴うように、吸血鬼ピーに「犯されて誕生する」鬼太郎には鬼気迫る迫力と
堕落した色気を嗅ぎとることが出来、こんな淫らな鬼太郎を松本作画で拝めることに秘かなる悦びを感じます。
そして「覚えたてのサル」のごとく、執拗に血を求めて唾液をふりまき這い回る姿はまさに「堕ちたヒーロー」に
ふさわしく、快楽に溺れる者の醜さと美しさの倒錯を、同時に堪能することが出来るのです。

そしてもうひとつの倒錯、それはやはり閻魔大王です。
目玉親父が息子を助けて欲しいと懇願に出向くと「鬼太郎がな・・・」と切な気に呟いて考え込み、またしても
鬼太郎を助けるために、今度は時間を過去に戻すとか言い出しました。本当に大丈夫でしょうか。この人。
時間を過去に戻す妖力列車・まぼろしの汽車に鬼太郎を乗せて、鬼太郎が、鬼太郎は、と、最早「吸血鬼」とか
「村人」とか「日本の危機」とかそんなものは閻魔大王の眼中にはありません。ひたすら鬼太郎です。鬼太郎だけ。

過去現在未来、どんな時系列においても、閻魔大王の愛は不滅なのです。
そして恐山に奉納してある由緒ある「妖怪鐘」を鬼太郎の為に破壊してしまった事、もはや誰も覚えていませんね。
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鬼畜度/★★   狂い度/★★  


■妖怪火車 逆モチ殺し!(62話)
脚本/武上純希 演出/明比正行 作画監督/松本朋之(イケメン御三家/しょうゆ顔)

鬼太郎「テメエらあ!お坊さんになって修行をやり直せエ!!!」
ヤクザ「な、何ですってええ!?」

松本さん鬼畜鬼太郎2連発/後編です。この回は本当にハジけて大変なことになっておりました。
それにしても前作の吸血鬼鬼太郎の凶悪ヅラに、今回のヤクザの親分と化した鬼太郎の鬼畜ヅラ。
2週連続で正義の味方とは思えない鬼太郎ばかり気合いを入れて描いていた松本さんのテンションを
思うにつけ、ああ、良かった。松本さんで本当に良かったと、思わず座円洞の方角へ頭を垂れるのです。

鬼太郎「それよりどうだ。酒とごちそうと女のいる所へ案内してくれないか?」
(風俗街で看板バイト中のネズミ男に)
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ヤクザ「ここはガキの遊び場じゃねえんだ。とっとと帰ってママのおっぱいでもしゃぶってな」
(ピンサロ前にて。鬼太郎とネズミ男に対してのヤクザの台詞。)
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鬼太郎「年増には飽きた。行ってみるか!」
(場末のホステス2人を眺めて。飽きるほど3日3晩ナニをしていたんだ!!!と、
ホステスに対して一瞬でも本気で嫉妬した自分は、潔く病院の門を叩くべきだと思いました。)
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火車の魂が入った鬼太郎の身体と、鬼太郎の魂が入った火車の身体。
ヤクザ「鬼瓦組」を乗っ取り、「鬼太郎組」親分として酒と女の味を思う存分に堪能する鬼太郎の「身体」の記憶。
それは3日3晩の酒池肉林の記憶です。その肉体が持つ生々しい「快楽分子」は、鬼太郎の魂が身体に戻った際に
「肉体の記憶」として共に伝達されたことは想像に難くありません。何故なら、魂と肉体、どちらが欠けても
「鬼太郎」として成り立たないということは、既に火車の身体に存在する鬼太郎を見た瞬間に、痛いほどに実感した
ことわりだからです。あの淫らな肉の記憶は、間違い無く鬼太郎に伝わった。間違いありません。キッパリ。
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鬼畜度/★★   狂い度/★★  


■悪魔ブエルとヤカンズル(63話)
脚本/星山博之 演出/今沢哲男 作画監督/平田かほる(イケメン御三家/色気担当)

鬼太郎「事情はどうあれ、ヤカンズルを呼び出してくれと頼んだのはボク。この責任は取ります!」
(こういうところが3代目ですね。不覚にもシビれます。)

自分の手が、意志に反して勝手な行動をとってしまうという鼻血の出そうな設定であったのに
手が「悪霊」にとり憑かれた平田鬼太郎を拝めなかったのが心残りです。本当に心残りです。
「ああっ・・ボクの手が!こんな事したくないのに!」くらいやってくれても良かったじゃありませんか。
なんでやってくれなかったんですか。そういうの平田鬼太郎にはすごく似合うじゃないの。と、
勝手に妄想を膨らませては文句を云う。手におえません。自分が。

しかしヤカンズルに対する鬼太郎の責任の取り方、それがガス注入の放置プレーというのは
どうなんでしょうか。そ、それでいいんでしょうか。皆でラーメン食べて笑っている場合なのでしょうか。
その間にもヤカンズルの放置プレーが続行中だと考えると、どこか神経のたがが外れてしまいそうです。
ブルブル。
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鬼畜度/★    狂い度/☆   


■妖怪穴ぐら入道(64話)
脚本/大橋志吉 演出/芹川有吾 作画監督/柳瀬譲二

ネコ娘「手がかりもナッシング」
(寒い・・・・多用している私はもっと寒い・・・)

廃坑で静かに暮らす穴ぐら入道を、私利私欲の権化である人間が誘い出し、追い詰め、殺そうとする
そんな絶望的なまでの「人間讃歌」ならぬ「人間嫌悪」を、最後まで淡々と書ききった大橋さんが心配です。
何かあったんですか。大丈夫ですか。人間、良いところもありますよ、と、思わずその細い肩を叩きたく
なりますが、そうは云ってもこちらも筋金入りのアンチ人類愛の廃人です。万歳三唱で同調してしまいます。

人間を信じ、裏切られ、利用され、思い通りにならなければ存在することすら許されず。
彼はただ、愛する蜘蛛たちと静かに暮らしていたかっただけなのに。
「人間なんてこんなもんだ。」と吐き捨てた穴ぐら入道の絶望を、理解出来ない愚鈍さが、私は憎い。
人間どもめ!!!

その他見どころ:イライラしっぱなしの鬼太郎ちゃんの、ネズミ男に対する数々の暴力が凄まじいです。凶暴通り越して非道です。
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鬼畜度/★☆   狂い度/☆   


■妖怪百目・地獄流し(65話)
脚本/武上純希 演出/生頼昭憲 作画監督/山口泰弘(ムチムチヤマグッチ先生)

囚人A「じいさん(鬼太郎に向かって)、何したんだい。」
囚人B「泣く子も黙る婆尻刑務所だ。それなりのコトをやらかしたんだろうなあ」
鬼太郎「強盗と、人殺しを少々・・・。

この回のポイントは、何故作画監督がヤマグッチ先生だったのか、ということです。
鬼太郎、警察の密命を受けて男の花園その名も
婆尻刑務所の囚人部屋に決死の突入というこの狂いぶり。
まさかの囚人デビューです。
極寒の男の園、婆尻刑務所では例にもれず階級制が導入されており、鬼太郎が投獄された囚人8人あまりの
集団房では、部屋の畳全て剥いで自分の住処とする、熊虎なる男がその頂点に座しています。
この熊虎と、じいさん扮する鬼太郎を軸に、倒錯した話は進んでいく訳なのですが・・・。

この回の作画が、松本・入好さん系統の鬼太郎だったら『熊虎と2人☆手錠で愛の逃避行』のシーンが
鼻血で染まってとてもじゃありませんが冷静に見られません。ダメです。
清山さんの作画だったら、囚人たちがムサくて生々しくてそれだけで放送禁止確実です。ダメです。
稲野さんの鬼太郎だったら『吹雪の中、山小屋で気絶した鬼太郎に襲いかかる熊虎の魔手☆』のシーンが
倒錯的すぎておかしくなりそうです。もっての他です。
平田さんの鬼太郎だったら、囚人たちの愉しみ『婆尻名物歓迎会☆』が深夜枠推奨の別モノになってしまいます。
ダメです。ダメすぎます。見たいことはこのうえないのですが。

やはりここは、健康的なムチムチヤマグッチ先生しかいないのです。これはスタッフの懸命な判断です。
だって、手錠ですよ?手錠。手錠された鬼太郎をあんなにノー色気で描けるのは、ヤマグッチ先生ならではです。

最後に脱力の鬼太郎名台詞。
「ある時はカワイイ女学生、またある時は年老いた囚人。しかしてその実体は!デヤーッ!ゲゲゲの鬼太郎!」

・・・こんなスケバン刑事の様な脚本書いたのは誰だ!と思ったらやはり武上先生でした。
これぞ武上ドリー夢。
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鬼畜度/☆   狂い度/★★   


■韓国妖怪ぬっぺらぼう(66話)(注:CS放映でも放送カットのいわくつき名作)
脚本/大橋志吉 演出/山寺昭夫 作画監督/清水明(清水並ギャグ!)

鬼太郎「・・ア〜リラン、アーリラン フア〜ラ〜リ〜ヨゥ〜・・(ブツブツ)」
(艶かしい腰付きで老体の舞いを踊り始めるイカレ鬼太郎)

キーワード:荒俣 宏著『新宿チャンスン』

真偽の程はともかく、あまりにも狂い過ぎで3部後半ビデオ未収録という作品群の中で、
今度は放映までカットという何やら笑ってしまうような伝説の一話に躍り出てしまった回です。
3部伝説がまたひとつ。

深夜、就寝中の鬼太郎を訪れた「翁童」の導きによって舞台は韓国へ。
韓国の村に点在する「魔よけ」と称したものは恐らくチャンスン。荒ぶるモノを鎮めるモノ。
この回、「荒ぶるモノの襲来」がまず聴覚、次に視覚で表現される点が非常に秀逸です。
しかも視覚で捉えたと思った瞬間、それが真の「荒ぶるモノ」ではないという錯覚の妙。
「荒ぶるモノ」は目に見えないモノ、視覚でとらえることが出来ないモノ、そして破壊をなすモノ。
そして「視覚」でとらえた瞬間、それは「荒ぶるモノ」から「妖怪」へと変わるのです。

非常に捉えにくい「異」のイメージを、すっと掴んで端的に見せた。この回にはそんな面白さがあります。
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鬼畜度/☆    狂い度/☆   


■密林の大海獣(67話)
脚本/星山博之 演出/葛西 治 作画監督/稲野義信(マニアウケ)

鬼太郎「山田さん・・・。アンタはボクに、何の注射をしたんだ・・。」
(こっこっ、このシーンの鬼太郎を見ないで人生を終わっていいのか!!!よくない!)

山田連合軍総立ち。鬼畜な大学院生・天才青年山田の登場であります。

 ニューギニアの密林、降りしきるスコール、蒸せかえる亜熱帯気候の中、極限状態に置かれた2人。
調査隊全員が無惨に殺害され、その横たわる死体を前に立ち尽くす山田。そして鬼太郎。
山田が鬼太郎に殺意を抱いたのはこの瞬間であったのか、それともずっと以前であったのか。

山田は鬼太郎を、殺す。何度も何度も殺す。殺したと思っても鬼太郎は現れる。そしてじっと、睨む。
殺意の情念に取り込まれたこの2人が放つ毒とエロスはあまりにも強力で、頭にスコールの様な霞がかかります。

山田は気がついていたのでしょうか?
「殺意」と紙一重の感情に。鬼太郎を殺すことに執着して、鬼太郎ばかり見つめていたことに。
彼が密林の中で発露させ、封印してきた感情。それは後半、日本でそっと開かれるのです。

<山田さん鬼畜のキ印@台詞抜き出し>
山田「・・・ここで鬼太郎が死んでくれれば・・生存者はボク1人。」
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山田「・・・人間の身体に、他の動物の血液が混ざれば、間違いなく死ぬ。」
---------------------------------------------------------------------------------------------
山田「あれは鬼太郎だ!ボクに復讐しに来たに違いない!何をしているんだ!早く倒せ!早く殺せ!!
---------------------------------------------------------------------------------------------

山田さん最高!この男こそ放送禁止!

また、サイドストーリーとして「密林のオヤジたち」バージョンも楽しめるのがこの回の醍醐味です。
隊長以下、杉本(仮名)を筆頭に揃えられた密林の中年部隊・大海獣調査隊。
その中でも異質な年齢層の大学院生・山田と、可愛らしい半ズボンの少年・鬼太郎。
明らかに仲の悪いこの2人があえて何時なんどきでもペアを組まされたのには、密林のオヤジたちの密やかな
愉しみ故であったのですが・・・故人たちの罪状を暴くのも気がひけるので、これ以上は歴史の闇に葬ります。合掌。
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鬼畜度/★  狂い度/★★   


■大海獣怒りの逆襲(68話)
脚本/星山博之 演出/葛西 治 作画監督/入好さとる(イケメン御三家/ソース顔)

目玉親父「ま、云いたくなければ云わんでもよろしい。鬼太郎と君の間に何があったかは聞かん。」
(沈黙する山田に向かってのオヤジの台詞。さすがです。大人の対応です。)

怒濤の後半戦。前半の山田が細身のポチャ顔だったのに対し、後半はがっしり体格のなすび顔イケメンです。
愛らしかった入好さん作画の鬼太郎が、後期鬼畜鬼太郎へと移行する記念すべき鬼畜顔デビューの回でもあります。
何故この回から鬼畜顔?
それは、この回キングオブ鬼畜☆新岡浩美さんが原画全て1人で描いていることに大きな要因があります。
また、一反木綿から落ちたネズミ男が、あごを強打したにも関わらず次のカットではおでこにコブを作っていたり
1から8までしかプッシュボタンがない謎に満ちた山田研究室の電話など気になってたまらない作画ミスも醍醐味です。
(ついでに山田さん宅の表札が「山田賢二」って・・・山田秀一の父??とか、コナキ珈琲嫌い説とか・・)

 日本に帰国後研究に明け暮れる日々の山田と、大海獣となって日本に上陸する鬼太郎。
密林での記憶、それは山田の脳裏からも肉体からも離れることはありません。
彼は、自室の引き出しの中、一番上のいつでも取りだせる所に自分が殺した鬼太郎の思い出を保管していたのです。
それは学童服、ちゃんちゃんこ、下駄の、3種の神器とも言えるモノ。-----「鬼太郎」の分身。

山田はそれらを夜毎、鬼太郎の分身として愛でていたのでありましょう。
自分が殺した、殺さなければならなかった、殺して初めて気が付いた、栗色の頭髪の少年への「想い」。
鬼太郎は「死んで」、ようやく山田の一部となったのです。

だからこそ山田には許せなかった。
鬼太郎が、「大海獣」として、醜い化け物として自分の前に現れたことに。
それは鬼太郎ではない。そんなモノは、再び殺さなければならない--------。


 前・後編通して、山田はとにかく鬼太郎に「異物の挿入」を繰り返します。
注射器で血液を、ロッカーに常備しているライフルで「興奮剤」を、そしてまた注射器で・・。
彼の屈折した感情は、そうした行為でしか昇華されないのかも知れません。

そして彼は確かに天才でありました。
鬼太郎を「鬼太郎」に還元出来るのは、山田秀一しかいなかったからです。

「その時」山田が望んでいたもの。
それは、自分が殺した相手に殺されたいという、「死の連鎖」だったのかも知れません。
叶うことはなかったけれど。

その他見所:コナキ「悪いネ!」の一言で殺人実行とか、とにかく何でロッカーに興奮剤?とか、
「犯ってくれ」「犯ってやる」とかとにかく見ろ!その前に本家本元の大海獣は今頃なにしてるんだ??
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鬼畜度/★★  狂い度/★★  


■妖怪風の又三郎(69話)
脚本/武上純希 演出/明比正行 作画監督/清山滋崇(影3段の男・体臭の作画)

鬼太郎「聞き分けのない子にはおしおきだ!」
風子 「やめて!又三郎を苛めるのはやめて!!」

俺の本気を見ろ!と体臭の作画・清山さん何と原画1人で描いてます。

本当なら、風子が又三郎と共に人間世界に決別をしようと試みるのは子供時代の---などと蘊蓄述べようと
思っていたのですが、そんな机上の空論がブっ飛んでしまうほどのインパクト狂いがこの回にはあります。

それは、「赤ひげ医院」貸しきりにしての鬼太郎と砂かけ婆の本気の「お医者さんごっこ(←覚悟して見よ)
ヤバすぎます。鬼太郎はともかく、砂かけ婆が本気すぎます。そのプレー魂には感服です。
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鬼畜度/★   狂い度/★★   


■鏡地獄!妖怪うんがい鏡(70話)
脚本/武上純希 演出/芹川有吾 作画監督/松本勝次(肝臓に病あり)

ユメコ「鏡爺さんは、ちょっとエッチでロリコンだけど心の底から悪い妖怪さんじゃないのに。」
一反木綿「そーそー、ちょっとエッチでロリコンじゃけどネ。」

ユメコちゃん毎度ながら無断外泊です。正夫は少し放任主義過ぎやしないでしょうか。
大体、鬼太郎の家に遊びに来た時間が、春一番の吹き荒れる夜というのはなんなんですか。
「ユメコ!こんな夜遅くにどこへ行くんだ!」「鬼太郎さんのところよ。」「鬼太郎くんの・・」
ということで多分オーケーだったのでしょう。などと。放っておくと妄想が止まりません。

雲外鏡扮した美少女・雲子の奸計に堕ちた鬼太郎たちを救い出すこの回の彼女のカッコ良さと、
そして最後まで協力してくれた一反木綿をあっさりと裏切るしたたかさには、ユメコファン
ならずとも惚れ惚れするはずです。こういう駆け引きの出来ない人間はつまらないですよ。
「朴訥」「不器用」「素朴」なんていうのは、褒め言葉ではありません。社会においては。
「ユメコ嫌い」などと云って彼女の才と美に嫉妬している暇があったら己を磨け。磨きなさい。

「鬼太郎さんなんて、大嫌い!!」
敢然と言い放ち涙ながらに走り去るユメコと、追いかけようとする鬼太郎、それを女の魅力であっさり引き止める雲子。
そして鬼太郎が雲子の言いなりになっている間、鬼太郎が追いかけてくることを信じて深夜の公園で1人待つユメコ。
濃すぎます。お子さまが鑑賞するにはあまりにも生々しい男女の関係を、喜んで書いたのは案の定武上さんです。

それよりも、ネズミ男の雲外鏡への顔面放尿プレーと、何よりも弱っていた雲外鏡が、ネズミ男の尿を全て飲みほして
更にパワーアップした様に見えるのは私の気のせいなのでしょうか・・・。しかし・・しかし明らかに・・・。

鬼畜度/★★   狂い度/★   


■妖花の森のがしゃどくろ(71話)
脚本/大橋志吉 演出/岡崎稔 作画監督/平田かほる(イケメン御三家/色気担当)

鬼太郎「がしゃどくろー!さっきはゴメンなー!後は頼むぞー!」
(さっきとは、がしゃどくろの頭蓋骨を容赦なく引っこ抜いて放り投げた鬼畜的所行のことでしょうか。)

平田さんが本気を出した丸尾末広的美女・華子のレトロな美しさは、人間離れしていて怖いくらいです。
精巧なビスクドールの様な女と、南国に咲く毒々しい仇花、そして髑髏。完璧です。完璧な頽廃の美です。

***この回のポイントは、演出・岡崎氏とコンビを組んだ平田作画の新鮮さにあります。
「静」の演出・今沢氏とのコンビが多かった気品溢れる平田鬼太郎が、対大ダコ戦、対がしゃどくろ戦で見せる
「動」的なはつらつとした動き、大胆なカットは、平田作画の新境地と呼ぶにふさわしいものとなっています。
特にがしゃどくろ戦。
巨大な敵の存在感を強烈に印象づけた一連の戦闘シーンは、一瞬たりとも見逃せない完成度の高さです。

脚本的な面白味は少ないものの、この演出は必見の価値のある作品です。私はとても好きです。
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鬼畜度/★    狂い度/★   


■ケ・け・毛!妖怪大髪様(72話)
脚本/星山博之 演出/石田昌久 作画監督/松本朋之(イケメン御三家/しょうゆ顔)

ネコ娘「あたしお嫁に行けないーーー!」
鬼太郎「行くところがなければ、
ボクがもらってやるよ!

髪の毛を奪われたネコ娘に対しての、鬼太郎の不意打ちのプロポーズ。この無礼な所行が
しかもこれが、イケメン松本鬼太郎で拝めたという幸せ。3部の数ある伝説の回のひとつでもあります。
この様な横暴なプロポーズの仕方は、正に男根思想の3代目ならでは。張り倒したくなる程の自信です。

生娘の生贄、という猟奇的設定にふさわしく、海に囲まれた閉鎖的空間で起こる怪事件。
漁村が「無機物」の髪の毛に包囲される恐ろしさと、「外界からの異端者」であるネズミ男を平気で贄として
差し出す村人の恐ろしさ。そんな中で鬼太郎とネコ娘の爽やかなコンビプレーは、後半の大団円まで一貫しており
全体として非常に好印象を与える作品に仕上がっています。

また、髪様との対戦時に流れる、ラッパの音で始まるテーマ曲「出陣!日本妖怪軍団」が、こんなにも
戦闘シーンに似合うということにはじめて気がついた回です。松本鬼太郎の戦闘シーンには抜群の相性です。

そしてサービス満点の松本鬼太郎、髪様に四肢を縛られ苦しくも切な気に悶える事も忘れません。
良い悶えっぷりです。アミキリが助けに入ったのが憎らしくなってしまうほどです。
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鬼畜度/★    狂い度/★☆  


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